織田信成!安藤美姫!

twitterなどでまとめられた、織田小塚高橋が、三人並ぶ写真を見て、改めてメソメソしたりしておりました。記憶の断片にアルベールビル、長野、そこからソルトレーク後の長野(世界選手権)に飛んで、何となく追うようになったのはトリノシーズンから。

視聴環境が本格的に整ったのはバンクーバシーズンの終わりから(Jsportsへの加入)でしたので、自ずとこの三人への思い入れも深く、この三人が「3枠のうち最後の1枠を争う」という状況は、胸に迫るものがありました。

オフアイスでもオンアイスでも仲のいい所を見せてくれて、とはいえ、それが甘えに見えなかったのは、彼らが、常に戦う相手は自分自身という事を知っていて、その努力をしていたからなんだろうと思います。三人で、競い合って、支え合って、「日本のフィギュアスケートの男子シングル」を強くしてくれた、という印象が強いです。

トリノの選考で泣いた織田君がとってきた世界選手権の2枠。それから、高橋と織田が頑張って「崇彦の枠とって来たよ」となって、そして小塚が「枠!枠!枠!」と、3枠を死守して。そうやって、日本の男子シングルは、世界選手権で3枠が当たり前の国になった。そういう印象があります。更にそこに無良君が加わって。

バンクーバの後、高橋が、小塚にかけた言葉が「ソチのホープは君だ!!」で、織田にかけた言葉が「まだまだ上を目指そう!若い物には負けんとこう」。

うちの夫なんかは、私につき合ってフィギュアスケートを見るくらいなのですが、ずっと見続けているせいか「織田と高橋だけが共有できる何かがありそう」だとか「織田だけが、高橋の事を盟友と呼んでもいい…」とか言いだすようになっちゃって、ちょっと、気持ち悪いです。でも、まあ、私もそう思ってるんだけれども。

 今年のNHK杯。久しぶりに見た高橋、織田が並ぶ表彰台は、感慨深いものがありました。EXのラストサムライは、シーズン前にショーで見た時も圧倒されましたが、試合後のそれはまた桁違いによくなっていて、織田選手のもつ技術と、その技術に裏付けされた表現力ーサービス精神とかショーマンシップというようなものーが余す所無く詰め込まれており、それは、彼がまだまだ日本のトップにたって世界で戦える選手である事を証明する滑りだと思いました。なんてむねあつ。

 MOIは残念ながらTVでの観戦でしたが、ラストサムライはますます磨きがかかっており、そら恐ろしくなったほど。TVでも十分伝わるスピード感と滑りの美しさにはっとし、何気ない動きに目が釘付けに。また、織田選手と言えばジャンプ時着氷の膝の使い方の柔らかさ、美しさに定評がありますが、その膝の柔らかさが、滑りの伸びにも影響している、と解説した荒川さんの言葉には、納得しすぎて首がもげそうでした。

 研ぎすまされたような滑りの後、泣き笑いの挨拶。鳴り止まない拍手は、なんとなく、「日本で織田君の滑りを見られるのはこれが最後」という「送り出し」の拍手でもあるかな、と感じていました。実際、「日本で」どころか、選手としての滑りは、それが最後、ということになったのですが。

 この前日に、安藤美姫が引退しました。強さと底力と、演技後には花が咲いたような笑顔を見せてくれたSP。そして、競技者・安藤美姫のプライドを見せてもらったFP。そのどちらの日も私は会場にいて、その場で泣きました。特にFPは、始まる前から、安藤美姫の、選手としての、これが、最後になるかもしれない滑りー少なくとも、目の前でそれが行われる事は高確率で最後かもという滑りーそれを惜しむような、同時に、行け、頑張れ、まだ見せてくれ、というような拍手があり、終わった後も拍手とスタオベ、点数が出てからもいつまでもいつまでも拍手は鳴り止みませんでした。

それは、とても素敵な瞬間でした。

 マスコミのフィルターを通して知った安藤さんの悪口を言う「ファン」や「人」を私は知っています。また、まだ年若い彼女の言動の一つ一つをジャッジして、自分の持つ倫理や正義に当てはめて、批判する「ファン」も「人」も見たことがあります。そういう事象がある事を、私は知っています。知っていますけれど、そんなものは、いない、と思いました。あの場に、という事だけではなくて、「いない」でいいんだって。大切な事は、彼女にとっての最後の全日本で、ありがとうの拍手が鳴り止まず、まだ見ていたいんだ、とファンが泣き、泣きながら、彼女の未来を祝福する、そういうことが起こる、ということ。それは、選手が歩いてきた道を示す物であり、選手が得た結果の一つだ、と思いました。その後の彼女からのメッセージの中で、「夢の場所に行けなくてごめんなさい」と五輪に行けなかった事を詫びる一言がありましたが、何よりも、あの場所が、ファンにとっては「夢の場所」だったと思います。最後までそういう場所を作ってくれた選手には、感謝の言葉しか思い浮かびません。

 話を戻して、織田信成です。最後の引退の挨拶の様子は、残念ながら、TVの放送が途中出来れてしまったので、文章で読むしかなかったのですが、織田選手が愛すべきスケーターであった事、同時に敬意を払うべき選手であったことをうかがわせる物でした。実際、織田選手の出る試合会場って、いつも「愛されてるなあ」って感じがするんですよね…。

「僕のスケート人生は幸運の連続だった」

と、少し前のインタビューでも語っており、そういう言葉で締めくくる事の出来る、スケート人生を送る事の出来た彼は、やっぱり幸せを持ってるスケーターで、その幸せを、滑りで、ファンにわけてくれていたのでした。敬意を込めて、彼を、ハッピースケーター!と呼びたい。もちろん、安藤美姫も!

織田君がいてくれてよかった!高橋君と織田君で、競い合って、そこに小塚君、そして無良君も入って、男子フィギュアスケートの国内争いを盛り上げてくれました。この日、小塚選手がインタビューで、「また戦っていく」といったこと、聞き逃しませんでした。願わくば、4年後の全日本までその姿が見られる事を望んでいるけれど…少なくとも、小塚選手の最後のその日も、たくさんのファンからの祝福と、ありがとうの拍手が送られる日であるべきで、どうか、そういう拍手をさせてくれ、という気持ちです。
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 でも、まだ私は、キョウリュウジャーダンサーズのコーナーに、織田一家が登場する事を諦めていないからね…

 

 

ステップ バイ ステップ

ステップ バイ ステップ