「○○は男の影響」って言われたら、めんどくさい、と言う気持ちがまず頭をよぎるし、同時にそんなの笑えない駄洒落なんだから、女は女で「あ、男ってこういう事言いたがるよねー」「なんでも自分の手柄にしたいんだねー」と悪口言って、鬱憤をはらす、ような、こと、では、ある……とは思う。

ただ、一方で、そういうことを、レッテル張った対象の前で口にする、というのは、例えば会社で「女の子はすぐ泣く」とか「ヒステリー」とか言ったりするのと、大して違いがないわけで、つまりそれは、「そんな事で噛み付くなんて」って言われるような事でもない。

少なくとも、twitterで「女って○○だよねえ」と口にすれば違う人から「違います」ってレスポンスがあるのは至極真っ当なことだし、本人の中で限定条件付けて口にした言葉であっても、文字面に限定条件が入ってなければ、そのまま受け取られるのも当たり前だし、もっというと、限定すれば良かったのか、と言う話でも……なくない?

更に、こういう事って、古い体質の会社で上司にそう言う事言われるのと、twitterで、趣味を信頼している、自分にとって文化拠点になりうる男の人が言うのとでは、申し訳ないけどショックが全然違うんだろうから、双方不幸なことだ、と思う。

心構えもしてないし、何より、ああ、こんな人でさえ、こういう風に「言っていい」と思うんだ、というショックをうける。もちろん、そのショックは手前勝手なショックだと言うことも理解しておりますが。

町山さんがtwitterでそういうことを言った、と言うお話しに関しては、ご本人も軽率だった、とすでに謝罪されてるわけで、何より私個人は謝罪を望むような立場にもないし、ご本人にどう、と言う感情は全くないのですが、自分自身の考えをまとめるものとして書き記しています。

昨日、その謝罪までのやり取りなんかを見ながら、ああ、これ、何かで読んだな、いや、よくある設定だけど、このもやもやを書いた物語があったな、と考えていて、思い出しました。

姫野カオルコだ。姫野カオルコの、「人呼んでミツコ」の中にこの感じをそのまま書いた話があったはず。

 主人公の女性はアルバイト先の会社で、セクハラを受けてる。

(「女って○○だよね」的なものから、「女は若くないと」「かわいくないと」とか「君はたくましいから。あ、これ、褒めてるんだよ」的なことを、ギャグとしてしょっちゅう言われてる)

同部署の女性上司も、ずっと同じ目にあってて(女性の年齢や容姿をギャグとして貶めるタイプの発言をされてて)その、男性が口にする「みんなを盛り上げようというサービス精神で口にする、ちょっとブラックで本人気が利いてる(と思ってる)女性蔑視ギャグ」に、部署にいる他の女の子も笑ってる。

笑っている女の子だって、もちろん「セクハラ」は受けていて、ただそれは、「ブス」だの「デブ」だのという種類じゃなくて、”優越感を刺激する”タイプのものであり、女の子は「もー課長ったらー」みたいに(表面上は)笑ってやり過ごしている。

そういうことにもやもやした主人公が、ある時女性上司に相談する。 「怒ってるんじゃなくて困惑している」みたいなことを。あくまで、笑っている女の子にも事情があって(処世術であるというようなことはやんわり理解している)だから嫌悪感を持ちたくないのに、「裏切られた」みたいな気持ちでもやもやする、みたいなことを。

どうかと思う発言をしているのは男性。にもかかわらず、そこにいる女性にも、もやもやしてしまう、と言う困惑。
結局、女性上司が、男性の発言について「ああいう事を平気で言う輩はいるからのだから、仕方がない、と思うことにして、せめて自分は同じ次元に落ちないようにしよう、と思ってる」といい、折り合いを付けていくしかないわね、という話になる。

あれは、確か最後、主人公がそのくだらない駄洒落に駄洒落で返すんだった。殴り返すのだ。

そこまでは、女性上司と二人「同じ次元に落ちてはいけない」と耐えているのだけども、ある日、女性上司が先に切れてしまう。しかしその切れ方は、決して「同じ次元に落ちた」なんていうものではない。真っ向から、 正論を男性にぶつけるのだ。「男ってそういうこと言うよね」じゃなくて「そういうことを言うのは、違うんじゃないですか」って。

そしてもちろん、場はしらけて、「これだから女は」って言われる。

昨日までのやり取りを見ていて、似ているなあ、と思ったのは、

「そういうことを言う男はどこにでもいる」とかそういうことではなくて、その後

町山さんの言葉に「軽口だよね、わかるわかる」*というレスポンスを見たときだった。


「男子の部室」で聞いちゃった軽口を「女子の部室」で軽口言って対処する、という能町さんのやり方は、そうですよね、と頷くものだけど、でも、かといって、「それはちょっと違うんじゃないですか」と本人に言う人のことをおかしいとも思わない。

そういう軽口は、それを受けている人にとっては「真面目に向き合って解決して欲しい問題」だし、それが自分にむけられたものではない、といくら思ったとしても、ああいうことってギャグだよね、いっていいよね、これに反論するなんて無粋だよ?という空気こそが、その軽口を助長し、実際それに苦しむ人を作っているのだから。私は、笑いたくないし、笑えない。

*一応書いておきますが、この言葉でレスポンスがあったわけではない。「ただの軽口なのにね」といった趣旨の賛同があったのを見たのです。

ひと呼んでミツコ (集英社文庫)

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